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Adobeがどっちを向いて製品を出すか、それが問題だ

アドビがマクロメディアを買収した件を、さらに深く突っ込んで考えていこうと思う。端的に結論をいえば、私が注視したいのが、アドビが今後、誰に向かって製品を出していくのか、だ。

この先の記事は、半分SF小説みたく「かなり妄想」が入ってますので、それを前提にお読みください。

で、まずは極東ブログとR30、2つのブログ記事を読む。全文重要なのだが、特にその中でもこの記事で取り上げる部分を以下に引用。

アドビのマクロメディア買収について雑感

同様の技術的なデッドエンドは、PDF技術とフラッシュのSWF技術にも見られる。どちらも、幸いにして、こららの文書形式は独占されていない。その意味で、サードパーティが参入できる余地があり、しょぼい安価なソフトがちらほらと出ている。が、いずれもPDFはXMLと統合され、また、SWFのベクターグラフィックスの部分はSVGに統合されるべきだろう。とはいえ、これらも要するにそれを支えるエンジニアやデザイナーの労働市場に依存するだろう。

AdobeとMacromediaはXMLの夢を見るか

では、なぜAdobeはMacromediaと一緒にならなければならなかったんだろうか?彼らの狙いは、いったい何か?僕の勝手な予想だが、それはたぶんXMLのためなのだろう。Adobeが抱えてきたペーパーパブリッシング系のユーザーは、今おそらく10年に1度の大きな転換期を迎えている。日本でも既に起こっていることだが、ウェブサイトが雑誌や広告の市場を荒らし、紙だけを作っていたのではもう収益を稼げない時代に入ってきた。従来テキストや画像処理など、それぞれの領域だけで進められてきたデジタル化を、プリプレスのプロセス全体で統合し、さらにXML化したデータをリアルタイムでウェブなどにコンバートする技術が必要になっている。

アドビはこれまで(イラストレーター、フォトショップが典型的だが)、いわゆる「業界向け」「専門職人向け」のソフトを出してきた。XMLとかSVGとか、「プリプレスのプロセス全体で統合し、さらにXML化したデータをリアルタイムでウェブなどにコンバートする」(by R30)ことが、結局今までどおり広告制作会社とか印刷会社の中で行われるのなら、はっきりいって「業界の中の人」的には、今まで通りの仕事を続けて問題ない。

「XMLって何、ウェブの言語のことでしょ、印刷担当の俺には関係ない」って考えていても、まあ致命傷にはならない。 finalvent氏の言葉を借りれば「要するにそれを支えるエンジニアやデザイナーの労働市場に依存する」ので、今までのMacOS8.6+イラレ+フォトショ+クォークで確立された工程を崩したくなければ、仮に「XML対応イラストレーター+InDesign」とかを販売してきても、それを無視し続ければいい。そんなニーズは、クライアント側からは、よっぽど先進的な考えをもった管理者がいる企業でない限り、ない。

問題はアドビが、「プリプレスのプロセス全体で統合し、さらにXML化したデータをリアルタイムでウェブなどにコンバートする」ツールセットを、製作会社・デザイナー向けではなく、一般企業・個人向けに展開したときである。

この製品群が一般企業に受け入れられたら、製作会社は一大事だ。多くの仕事が製作会社から消える恐れがある。特に製品カタログとか取り扱い説明書・マニュアルとか、決まりきった規格の印刷物は、まず最初に製作会社から消える可能性大。

本当にアドビが理想的に製品を開発すれば、一般企業は「製品写真、製品名、製品番号、価格、キャッチコピー、説明文」などをパソコンでXMLツールに入力するだけで、製品カタログもWEBページも骨組みが完成してしまう。もちろん、価格が改定されれば、XMLツールを修正するだけで、自動的に印刷物もWEBもPDFも修正される。校正するのはXMLデータだけでいい。

もちろん、こんな半自動で生成した印刷物やWEBページは、そのままでは機械的過ぎるし融通がきかない部分もある(例:XMLデータに入力されたキャッチコピーと説明文は、5月号カタログに限ってはスペースがないので文章量を短縮しなきゃならない、など)だろうから、最終的にはデザイナーとかライターとかがかかわる部分もゼロじゃないだろう。が、一からカタログを作るのと、ある程度骨組みができているカタログを修正する作業とでは、当然取れる金額は変わってくる。下手すりゃ半分以下だ。まあ、その分作業量も減っているわけだが、そうなると業界全体で仕事の取り合いになるので、作業時間に対する単価は下がる。

つまり、「印刷物作りました」「WEBページアップしました」っていうだけじゃ、メシが食えなくなる。そんなの誰でもできる、一般企業の営業マンが、ワードを使っているのと同じような感覚でXMLツールを入力してデータを生成し、あらかじめ用意されたテンプレートを通せば、製作会社を通さなくても最低限のカタログができて、印刷会社にデータを渡せてしまう。と同時に、同じXMLデータからWEBページもPDFも製作できる。いわば「印刷+WEBのトータルCMS」の誕生だ。

わざわざ製作会社にお声がかかるときは、単に製作するということ以上の何か、それはより一層のデザインクォリティか、それ以外の付加価値(=検索エンジンにひっかかるようにWEBに特化したライティングを行う)かはわからないが、を求めている時に「限られる」ことになる。

うーん、ここまで理想的に(業界の中の立場からみれば悲観的に)ことが進むかどうかは、はっきりいって書いてる私も疑問だが。とにかく、今後のアドビ製品群には注意しなければなるまい。



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