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情報を独占するのと、オープンにするのではどちらが得か

持っている情報、モノの製作方法、技術的なノウハウなどを、これまでどおり自社の財産として保有し隠すのか、インターネットを通じて公開=オープンにしてしまうのか。利潤をあげることを目的とした「会社」の場合は、悩むところなんだろう。私なんかは、もったいつけてないで全部公開しちゃえばいいのに、と思うんですが。

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だから情報がオープンになること、情報が誰にも共有されてしまうことを怖がる。むろん「情報の共有」によって全体としての生産性がおそろしく高まることに気づき始めている人は少なくない。でもそのメリットを打ち消すほど大きな不安が存在する。情報はオープンになった瞬間に価値を失うのではないのか? いや価値を失うどころか、とんでもない災厄がわが身に降りかかってくるのではないのか? そういう不安だ。だから「失うものの大きい」組織ほど「情報の隠蔽」に向かっていく。

特に私の会社のような広告制作会社=メーカーの類は、「ものづくり」に誇りを持っていたりするので、作ったものとか、作る過程でのノウハウとかをを「タダで公開」するのに抵抗がある人が(他のサービス業などより)多いのだと思う。

現に私は、今、会社でWebについての勉強会とかで調べたり、仕事で利用でしはじめているCSSのテンプレートのストックとかを「全部公開しましょう」と会議でいっているのだが、やっぱりもったいぶられてしまう。せっかく調べた「自社の財産」を、他社に簡単に明け渡してしまう、っていう意識が強い。

梅田氏は「・・・だから「失うものの大きい」組織ほど「情報の隠蔽」に向かっていく」と書いているが、こと「メーカー」に関しては組織の大きい・小さいは関係なく、情報の隠蔽に向かいがちなのかもしれない。自分たちの作ったモノに過剰なプライドをかぶせてしまうからだ、「これはオレが作ったものだ」と。特にWebとか印刷の製作会社は、メーカーといっても他の大量生産品を作る会社と違って「完全オーダーメイド」なので、作る側が思い入れをもって製作しがちになる。そんな思いいれのある製作物の、苦労して作り上げてきた制作ノウハウを「タダで公開するなんて!」・・・

ま、私が「全部公開してしまえばいいのに」と簡単にいえてしまうのは、自己分析すると理由は2つある。ひとつは、私はホームページ製作は製造業ではなくサービス業だと思っているから、もうひとつは私の年収が約300万しかない=これ以上あまり失うものがないからだろう。

私は自分で作ったホームページとかフラッシュに思いいれがほとんどない。「我ながら結構うまくできた」と思っても、ホームページなんて更新してサイトの形がどんどん崩れていってなんぼ、と思っているので、2年前とかに自分の作ったサイトが更新されずにずっと原型をとどめているのを見ると、とても悲しくなってしまう。「ああ、私はこの子=サイトを上手く育てられなかったんだ」と。

年収も大きな要素だろう。既にある程度の年収がある人間(たいていが最終的に情報を隠すか、公開するかの決定権を持っていたりするのだが)は、どうしても保守的な考えになり、公開することによってのマイナス要素に目がいってしまうんだろう。その意味で、梅田氏はそこまで見切った上で、こんなこともまで書いてある。

自分が一つ前の世代の原理原則で動く仕事において「失うものが大きくなっていく」と、それに比例して新しい「力の芽」を面白がることができなくなり、それらを過小評価し最後には否定するようになる、ということに気づいたのである。それで結局、勤めていた大きな会社を辞めた。その会社に勤めたままシリコンバレーに居ても、この地の本当の面白さは実感できないと確信したからだ。

それである事業コンセプトで1997年に会社を作った。そして創業してから8年が経過したが、8年のうちに2回、つまり3-4年に1回だが、うまくいっていた事業を全部捨てている。そのまま育てればまだまだ大きくなるのにというときに捨ててしまうのである。それらを捨ててしまわなければ、新しい「力の芽」の台頭と共に生きていくことはできないし、「捨てる」思い切りみたいなものを持たない限り、「失うもののない」新しい台頭者に必ず負けてしまう。負けなくても、一世代前の仕事に封じ込められてしまい、あんまり面白くない。

凄い人だ。心から尊敬する、マジで。私のようにあまり失うものがなければ「そんなん公開しちゃえばいいやん」と無責任にいえてしまうが、普通は「新しい「力の芽」を面白がることができなくなり、それらを過小評価し最後には否定するようになる」ことが頭ではわかっていても、やっぱりそれまでの自分が成功してきたやり方を捨てきれないもんだと思う。

そんな無責任な私がいうのもなんだが、「公開したら他社に真似され、他社に簡単に利益を持って行かれる」ようなノウハウは、そもそもノウハウと呼べるのか、といってみる。それは、製作者のプライドから自分で過剰な価値を上乗せしているだけで、本当はノウハウといえるほどの情報ではないんじゃないか。

「おいしい料理レシピ」で材料の分量とか手順が公開されたからといって、素人、下手な料理人、鉄人料理人、3人が同じくらいのおいしい料理が作れるとはとうてい思えない。CSSにしたって同じだ。CSSの丸秘テンプレートが公開されたって、それを各ホームページごとにカスタマイズして使うにはやはり知識はいる。趣味でホームページを作っているだけの素人、下手なWeb製作者、上級プロのWeb製作者、3人とも同じクォリティのものができるわけがない。3人とも同じクォリティになったとしたら、それはレシピでもノウハウでもなんでもないのではないだろうか?

何はともあれ、梅田氏のエントリーは「続く」とあるので、次回に期待。今日はこの辺で。