アイフル全店業務停止命令の雑感
キャッシング(消費者金融)のアイフルが、金融庁から3日~25日の「全店業務停止命令」を受けた。業務停止はいずれも5月8日からのようだ。
アイフルの違法行為、長崎・諫早や福岡でも~金融庁 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
金融庁は14日、消費者金融大手のアイフル(本社・京都市)に対し、5月8日から3~25日間、全店舗(約1900店)を対象にした業務停止命令を出したと発表した。このうち諫早店(長崎県諫早市)では、社員が顧客からの委任状を無断で作成し、融資に必要な所得証明書や戸籍謄本などを取得した。コンタクトセンター福岡(福岡市)では、正当な理由なしで顧客の勤務先に電話をかけ、督促を行った。
行政処分によって、諫早店、コンタクトセンター福岡は5月8日~27日まで業務停止となる。このほか、無人店舗を含む全店舗が5月8日~10日まで業務が停止される。業務停止期間中も利用者からの返済は受け付ける。
アイフルは、厳しく度が過ぎた取り立てがあるとして、度々訴訟を起こされているわけだが、裁判所ではなく金融庁が一部その取り立ての違法性を認め、なおかつこの問題が個別の店舗や社員の問題ではなく「アイフル」自体の問題だと認定した形となった。
取り立ての厳しさ・違法性を持ち出さずとも、そもそもほとんどの消費者金融・キャッシングというのは、いわゆる「グレーゾーン金利」で借り手から金利を取り立てていて、スレスレのところで利益を上げている企業である。最近の多重債務者増加なの問題で、この「グレーゾーン金利」も廃止の方向で検討しているが、今回のアイフル「全店」業務停止命令で、さらに消費者金融・キャッシング業界は影響を受けるのは必至だろう。
で、ここから先ははまったくの筆者の推測であることを前提にお読みください。
グレーゾーン金利廃止の方向、あるいは度が過ぎる取り立てに対する業務停止命令など、最近の金融庁は借り手側に優しく、消費者金融業者側には厳しい方向で舵をとっているようにみえる。ただし、「法律できちんと上限金利を低めにした方がいいに決まっている」かというと、そう単純系の問題ではないと思う。キャッシング金利の上限が消費者金融が儲からないレベルに設定されれば、一歩間違えれば、現在上場していたりTVCMしている大手がつぶれ、かわりに「闇金融」が横行する可能性もあるからだ。
金融庁が「全店業務停止命令」などを出したりして処分・牽制できるのも、消費者金融会社が上場していたり、TVCMを流したりといった「表の業界」にいるからである。これが、大手消費者金融がつぶれて代わりに「闇金融」が暗躍するような社会になると、事態は今以上にまずくなる。金融庁だって、そんなことはわかっているに違いない。だからこそ、今の今まで「グレーゾーン金利」を放置してきたのだと思う。
が、ここにきて金融庁が消費者金融側に強気の姿勢を見せ始めたのはなぜだろう。もうここからは、完全に私の推測なんでテキトーに読み飛ばしておいて欲しいんだが、要は「仮にアイフルがつぶれても、代わりにキャッシング分野に新規参入したいといってきている大手の会社がいくらでもある」状況になっているからだと思う。
特に、NTTドコモとJR東日本だろう。
NTTドコモはここ数年、おさいふケータイやiDなど、通信料金の定額固定化による減収を見越して「ドコモ金融路線」に転じている。そして先頃、NTTドコモはクレジットサービス「DCMX」(ディーシーエムエックス)を開始すると発表した。4月28日から申し込み受付を開始らしい。「DCMX」が今までのおさいふケータイとどう違うかは、たとえば以下の記事をどうぞ。
【神尾寿のアンプラグド】ドコモのクレジット「DCMX」の衝撃
これまでドコモは、三井住友カードと共同で「iD」ブランドを推進してきた。しかし、実際にiDが使えるクレジットカードは三井住友カードの「三井住友VISA」であり、会員獲得や利用促進の先頭に立つことはできなかった。しかし今回、ドコモ自身がイシュアとしてDCMXを始めることで、ドコモが保有する約5000万人の顧客に対して、積極的な会員獲得を行うことができる。
ただし、いくらドコモ本体がクレジットカード業界参戦といっても、店舗によるクレジットカードの1回払いや電子マネーの少額決済だけでは、それほど大きな利益にはならないだろう。クレジットカードでも、一番儲かるのはやはり、「高額決済のリボ払い」と「キャッシング利用による金利手数料」だからだ。「DCMX」は、おそらくドコモ金融本格化路線の第一歩に過ぎないだろう。まちがいなく、キャッシング分野にも進出を伺っているはずである。この辺の事情は、電子マネースイカを率いるJR東も同じだと思う。
‥‥そんなワケで、私がきっこ並に大胆に予測すれば、今の金融庁が「グレーゾーン金利」を撤廃し、厳しい取り立てを排除しようとしている動きは、すなわちNTTドコモやJR東日本などの大会社がキャッシング分野に進出できるように「地ならし」をしている段階だと思う今日この頃なのだ。